Ultra25T カーボンスポーク化

ホイール 作業日報 組み換え

こんばんは。

ax-lightness Ultra25Tをカーボンスポーク化しました。


画像は作業後。

元の状態で実測重量が前後で785.1gというブッ飛んだ軽さのホイールですが、こちらのお客様は更なる軽量化をご希望との事です。

純正スポークはDTのエアロライトなので、計算上では当店のCSLに変更する事で更に100gくらいの軽量化が見込めます。
ハブのCSL適合確認がとれましたので組み換えを承りました。

このUltra25Tには、EXTRA LITEというイタリアメーカーのCyber SPというハブが採用されていますが、このハブもイカれた軽さの為かなり繊細そうです。

メーカーサイトをチェケラしたところ、各モデル毎に詳細なマニュアルが用意されていて助かりました。

因みに「ax lightness ultra25t」でネット検索したところ、(念の為伏せ字にしますが)一番上にcycl〇 wiredさんの記事が出てきたので取り敢えず拝読させて頂きました。

内容を要約しますと、「ULTRA25Tのリムは成型技術が凄くてニップル穴の強度がめちゃ高いから実質スポークテンションの上限が無く、最大140kgで張ってるから軽量ながら剛性感アルヨ。」的な事が書かれています。

140kgというのは140kgfという事ですかね。

取り敢えずcyberハブの名称が全て「cybey」と表記されていてウケる、というところには触れないでおくのが私なりの優しさです。

で、Cyber SPのマニュアルによりますと、各フランジ毎にスポークテンションの上限が記載されています。
フロント 90kgf
リアDS 上限無し
リアNDS 70kgf
との事でした。

で、先程のcycl〇 wiredさんの記事にありました140kg(f)まで張れるのは当然ながらDSだけなワケですが、計測してみますとスポークテンションにややバラつきが目立ちましたが140kgfどころか最大で160kgfくらいまで張ってる箇所もありまして、DSの平均は150kgfくらいでした。

DSがその状態でリムセンターを合わせると、NDSは大体50-60kgfくらいになりました。
DSがこんな非常識な程に張られているにも関わらずNDSがこんなタルタルなのは、お世辞にも「フランジの設計が良いですね」とは言えません。嫌味にしかならないです。

で、フロントもバラつきがありますが大体110-130kgfくらいでした。
思いっきりハブの上限を超過しています。これはもう一発免停ですね。

 

はい。

 

折角のやり過ぎな軽量ホイールを分解できる良い機会なので、各部品毎に計量してみました。

当店の秤は10分台までしか計量できない為、組んだ状態のモノとは誤差が生じてしまいますのであくまで参考程度にお考え下さい。
100分台の数値は割り出しになります。

・純正パーツ
Fリム:192.8g
Rリム:195.3g
Fハブ:48.4g
Rハブ:128.5g
ニップル:0.35g*44pcs
スポークF:4.62g*20pcs
スポークDS:4.78g*12pcs
スポークNDS:4.65g*12pcs
Fホイール:計算値340.60g(実測340.2g)
Rホイール:計算値445.36g(実測444.9g)
前後ホイール:計算値785.96g(実測785.1g)

・CSL化
ニップル:0.29g*44pcs
Fスポーク:2.40g*20pcs
DSスポーク:2.49g*12pcs
NDSスポーク:2.43g*12pcs
Fホイール:計算値295.00g(実測295.0g)
Rホイール:計算値389.80g(実測390.0g)
前後ホイール:計算値684.8g(実測685.0g)

といった感じです。
ほぼ計算通り、実測で100.1gのダイエットに成功しました。

685gなんていったら、重量的にはアルミリムのフロントホイールくらいしかありませんので、走り出したら軽過ぎて「あれ?リアホイール付け忘れたかな?」と不安になる(ならない)レベルですね。

 

お持ち込み頂いた状態ではハブベアリングの回転がゾリゾリ引き摺る様な感触があったのですが、Cyber SPハブにはマイクロチューナーと呼ばれるベアリングの押し加減を調整できる機構が付いており、それの調整で解消できました。


フロントです。
フランジの内側にマイクロチューナーと呼ばれる17mmのナットがあり、それの締め具合で調整します。

しかし普通の17mmソケットレンチでは肉厚過ぎてフランジの内側に収まらないので、


あまり出番のないレンチセットの17mmソケットに犠牲になってもらい、段付きに加工しました。


これで調整可能です。
スポーク交換の際もマイクロチューナーを外す必要がありますので、Cyber SPハブには必需品かと思います。

一応マニュアルでは「17mmレンチか手で回して調整してね」と記載されていますが、ちょっと手で回せる硬さでは無かったです。


リアのマイクロチューナーは20mmです。
一般的なレンチセット等には20mmのソケットはまず入っていないので、安価な20mmソケットを単品購入しました。

リアはフランジ内側のクリアランスが広いので、ソケットは無加工で大丈夫かと思っていたのですが、ソケットの底にハブシャフトのエンドが当たってしまい最後まで締め込めませんでした。


ソケットの差し込み角は9.5mm、シャフトエンドは10mm、足りない深さは2mm程度だった為、ソケットの差し込み部分を10mmのドリルで軽くさらうだけで使用可能になりました。

最初からディープソケットを用意すれば無加工でイケるハズです。


フリーラチェットの洗浄・注油も行いましたが、ラチェットの爪は2枚、爪を起こすのも金属バネではなくゴムのOリングという徹底ぶりです。

爪の位置を対角から少しズラしてある理由は良く分かりません。
組付け易い様にという配慮でしょうか。


フリーボディは11s用のシマノHGなのですが、要らない(?)部分が削ぎ落されているというか、スプロケを固定するのにギリギリ必要な部分だけ残したというか、何だか別規格のスプラインの様に小ざっぱりしています。


因みにフロントハブは向きの指定があり、マイクロチューナーが左側に来るように指示されていて、進行方向に対してロゴが逆位置になります。


リアのロゴは進行方向に対して順位置になります。

そういえば、カンパやフルクラムのフロントハブも、玉当たり調整ナットが左側に来るのが正位置になりますが、ロゴが順・逆位置になっているモノが混在しています。

カンパ・フルクラムのフロントハブはパーツの組み換えで左右を入れ替えられるので、今までは調整のついでにロゴの向きを順位置に直していましたが、もしかするとメーカー的にはフロントロゴは逆位置になるのが正解としているのかもしれないなと思いました。

私的にはハブロゴは前後とも同じ向きでないと気持ち悪く感じてしまいますが、もしかすると自転車を外から見た時に見易くなる向きにしているのかもしれません。

後ろからの視点では進行方向に対して順位置の方が読み易い。
前からの視点では進行方向に対して逆位置の方が読み易い。
という事なのでしょうか。

 


因みにリムは質感的にドライカーボンっぽいです。スゴい。
継ぎ目が対角に2ヵ所あって、最近の感覚では真円度はあまり高く無さそうに感じました。


こちらは元のDSスポークです。

一度チェーン落ちしたそうで、フランジの外側に位置するスポークにガリ傷があるのは事前点検で確認していましたが、バラしてみると傷が無いスポークも含めて12本全て首元で変形していました。

フランジの形状によって変形のし易さは異なりますが、スプロケのロー側の更にロー側に空中を描くラインでチェーン落ちした事のある方は一度スポークを緩めて確認してみた方が良いかと思います。

 

ご依頼頂く作業内容に優劣を付けてはいけませんが、今回は私がホイール組みに興味を持った頃の様なワクワク感を思い出したというか、ステータスを1項目に全振りした様な明確なコンセプトのホイールを、現状考えられる最上を追って更に尖らせてゆく様な作業には久々に燃えました。